2018年09月24日
Beatrice Masini『Blu, un'altra storia di Barbablù』
著者:ベアトリーチェ・マジーニ
タイトル:ブルー もう一つの青髭の話
出版社:Pelledoca editore
初版:2017年9月
マジーニバージョンの青髭のお話。
特徴は、登場する女の子が強いこと。
(以下、あらすじですが、結末も書きます)
その女の子の名前はブルー。
高貴な生まれだったが、同じような生まれの
他の女の子と違って、
ブルーは世の中を見たいと思っていた。
大きくなって、同い年の女の子たちが結婚していく中、
ブルーは周りの大人たちの反対を押し切って
愛馬とともに旅に出た。
ところが、どこまで行っても
畑か町か山のいずれかに出会うだけだった。
ある時、青髭の領地にたどり着き、
青髭と出会った。青髭は親切で優しく、
ブルーは青髭のことが好きになった。
青髭は強くて自立したブルーを好きになった。
二人は結婚し、いつも一緒だった。
青髭は仕事で出かけることがあっても
半日くらいしか城を離れることはなく、
いつも帰りに何かしら高価なものを
買ってきてはブルーにプレゼントした。
ところが、ある朝のこと。青髭はブルーに、
仕事で遠出をしなくてはならなくなり、
しばらく城を留守にするといい、
留守中、塔の上の仕事部屋に入ってはいけないと命じる。
信頼の証にブルーに部屋の鍵を渡して
青髭は旅立つ。
2日目、退屈したブルーは
青髭にサプライズを企てる。
彼の仕事部屋を青い花でいっぱいにするのだ。
渡された鍵で部屋に入ったブルーは
机の上に小さな木の箱を見つける。
中にはノートが入っている。
そこには女たちの物語が書かれていた。
女たちは青髭と結婚するが
ある日、突然青髭に殺されてしまう。
箱には女たちを象徴する品が
一人に一つ入っている。
ただの物語だと思いつつも
どこかで真実だと感じるブルー。
そこへ青髭が帰ってくる。
言いつけを守っていてくれれば
これまで通りの生活ができたのにと嘆き、
秘密を知られたからには殺さねばならない、と青髭。
恐ろしさに震えつつも、
6人の女の子を殺した青髭に怒りを感じ、
生きたいと願うブルーは、
平静を装って、自分は青髭の領地から
逃げ出すことはできないのだし、
あなたは領主で、わたしがいくら
あなたのことを殺人者だと話したところで
誰も信じてはくれまいという。
これまでの女の子たちとは異なる反応をするブルーに
青髭は驚き、殺すかどうかの判断は後回しにする。
ブルーの強さに惹かれている青髭は
ブルーを殺す決断ができない。
やがて青髭が眠ってしまうと、
ブルーはベッドを抜け出し、サイドテーブルから
ハットピンを取り出して、青髭の腋に突き刺した。
それは結婚式のために青髭が贈ってくれたピンだった。
ピンは深く刺さり、心臓に達したーー。
最後は、二人の子どもが生まれ、
ブルーと名づけられたその男の子が大きくなったら
子どもと一緒に領土を治めようという
ブルーのモノローグでお話が終わる。
3人称で語られる中に、老女の語りが入ったり、
最後はブルーのモノローグで締められていたりして
重層的な構造になっている。
殺された女の子の名前が色の名前で
(レッドとかグリーンとか……って書くと
戦隊ものみたいだけど)、
その色からイメージされる性格をしていて、
彼女たちがいた証に残された品も
やはり名前に由来するものになっている
(オレンジとか、ハート形の葉っぱとか)。
また、青髭の髪と髭、瞳は黒、愛馬は真っ黒で
名前もクロ、ブルーへの贈り物は
青い色のもの(クォーツがほどこされた短剣とか
サファイアが散りばめられたハットピンとか)
ーーという具合で、色へのこだわりが見られ、
とてもユニーク。
ブルーは青髭の秘密を知って、
恐怖、怒りを感じるんだけど
青髭を慕う気持ちもあって、
それまで愛した人をすぐには嫌いになれないという
フレーズがあったり、
寝ている青髭にハットピンを突き立てる前に
ブルーが指先でそっと
青髭の頬に触れるシーンがあったりして
細やかな心の機微も描かれている。
モノクロ+青で描かれたイラストは
作品にマッチして、物語の不穏さや悲しみを伝えている。
※ 本書は邦訳が出ていませんが、
マジーニの作品を読んでみたいという方には
以下の作品をお薦めします。