エリーザ・マッツォーリ文 クリスティーナ・ペティ絵『おやすみなさい トマトちゃん』(ほしあや・訳 きじとら出版)Beatrice Masini『Blu, un'altra storia di Barbablù』

2018年09月11日

子どもの本から若者の本へ ヤングアダルト小説を中心に

今日は大阪市立中央図書館で開催された、
大阪府子ども文庫連絡会と大阪市立中央図書館が主催の
2018年度児童文化講座の3回目、
金原瑞人先生の講演会「子どもの本から若者の本へ 
ヤングアダルト小説を中心に」に行ってきました。

メソポタミアの陶板、古代エジプトの
アレクサンドリア図書館にあったという30万巻の巻物から
お話が始まり、何故そんな大昔の話から??? と
思っていたら、本を読む人の歴史的な変遷のお話でした。

グーテンベルクが印刷技術を発明するまでは
本を読むのは王侯貴族や聖職者だった。
それが印刷技術発明で本を読む人が中産階級に広まった。

やがて図書館が誕生するが、それは会員制で
貸本屋みたいなものだった。
そして、出入りしていいのは大人だけだった。
子どもは本が読めないから
出入りする必要はないというわけだ。

やがて近代になって初等教育が始まり
子どもも本を読めるようになり、
子どもが楽しめるようにということで
児童文学が生まれ、図書館に子どもも入れるようになった。

社会は大人と子どもという2層構造になった。
ところが、戦後、社会が3層構造になる。
若者の誕生である。

1950年代アメリカは高度経済成長期を迎え、余剰金ができる。
できた余剰金を教育に回すようになり進学率がアップした。
ここで若者が誕生した。

同じころ、冷蔵庫や洗濯機、テレビが登場し
一般家庭に浸透していく。
それまではお茶の間にあったのはラジオで
どの年代が聞いても楽しめるものが放送されていた。
テレビがラジオに取って変わり、番組の傾向を引き継いだ。

一方ラジオは小型化され、各部屋で聞かれるようになった。
全世代に楽しんでもらわなくても良くなったことから
それまでタブーとされていた黒人音楽が
ラジオでかかるようになり、それを白人が聞き、
ロックンロールが誕生。
ファッションや映画でも若者に向けたものが
作られるようになった。

ところが、若者向けの文学作品が登場するのは
70年代を待たなくてはならなかった。
(けれども、サリンジャーは1951年に
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を書いている)

60年代のアメリカは、高度経済成長のひずみ、
黒人の参政権をめぐる問題、ウーマンリブ、
ベトナム戦争反対(やがて大学紛争へ発展)、
離婚率・再婚率の上昇、ドラッグの蔓延、
10代のセックス・妊娠といったことで不安定だった。

やがて読んで楽しいだけではなく、
子どもが生きる現実を描く作品を書く作家が出てくる。
最初は「問題小説」を呼ばれていたのが、
やがて「YA小説」と言われるようになった。

ーーと、遥か昔の本、読者から始まり
子どもの発見、若者の誕生を経て
わたしたちが楽しんでいるYA小説へと至る壮大なお話だった。

実はサリンジャーをこれまで読んだことがなかったのだが、
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の前日譚、
後日譚みたいな短編があって、
それは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を
書く前に書かれていたといったお話をうかがって
サリンジャーを読みたくなった。

ということで会場で金原先生が訳された
『このサンドイッチ、マヨネーズ売れてる
ハプワース16、1924年』を購入。
読んだら『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読むつもり。
またひとつ楽しみが増えました。






a_yshtm at 17:31│Comments(0)●ひとりごと 

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エリーザ・マッツォーリ文 クリスティーナ・ペティ絵『おやすみなさい トマトちゃん』(ほしあや・訳 きじとら出版)Beatrice Masini『Blu, un'altra storia di Barbablù』