2017年01月

2017年01月20日

Daniela Morelli 『I ragazzi delle barricate』

I ragazzi delle barricate
Daniela Morelli
Mondadori
2009-09


著者:ダニエーラ・モレッリ
タイトル:バリケードの少年たち
出版社:Mondadori
初版:2009年9月

舞台は、オーストリアが支配していた1846~48年のミラノ。
主人公のエンリーコは寄宿学校生。
授業のあとは、印刷所を手伝っている。

ある日、エンリーコは印刷所の親方から
デ・クリストフォーリス家へのおつかいを頼まれる。
学校の許可を得ずに街へ出て行くことは禁止されているのに、
またその家がどこにあるのか分からないのに
親方の反論を許さない様子に気おされて
エンリーコはミラノの街を歩き始める。

スカラ座の近くでオーストリア兵に絡まれて
困っているところを助けてくれたのが
焼き栗売りの娘セラフィーナだった。
セラフィーナの案内でエンリーコは無事に
デ・クリストフォーリス家へ頼まれたものを届けることができる。
そして、デ・クリストフォーリス家の子息マラキーアと知り合う。

どうやら印刷所の親方はデ・クリストフォーリス家の当主、
ドンナ・アデライデらとともに反乱を画策しているらしい。
エンリーコは印刷所に秘密の部屋があること、
その部屋が地下でどこかにつながっていること、
寄宿学校にオーストリアと通じている者がいるらしいことを知る。

父の死後デ・クリストフォーリス家の庭番になったセラフィーナ、
マラキーア、そしてエンリーコは3人で協力しあって
大人たちの画策を助けようとする。
その一方で、セラフィーナはひそかに宿したお腹の子に
リーベラ(自由)と名付けて誕生を心待ちにする。

そして、ある日。
街の人たちが静かに家のタンスなどを持ち出して
通りにバリケードを作り始め、オーストリア兵らと対立する。
エンリーコは寄宿学校の生徒たちをまとめて伝令を務める。

エンリーコ、マラキーア、セラフィーナの3人は
大聖堂で戦っている人たちに武器を届けようとする。
緊迫する状況の中、セラフィーナは産気づき、
エンリーコの機転で潜伏するオーストリア兵を取り押さえる中、
マラキーアは母を呼びに行き、
無事に女の子が生まれる。

援軍を得たオーストリア兵によって
3日後にバリケードは解除されてしまうが、
この小さな事件がやがてイタリア独立戦争へとつながっていく。

史実を元に、実在の人物も登場させながら
エンリーコ、セラフィーナという著者が想像の元に
生み出した人物を配して
独立戦争前夜のミラノが語られる。

読者対象:中学生以上
登場する少年たちが等身大で生き生きと描かれているため、
イタリア史をよく知らなくても、楽しめる一冊。
巻末に史実について、登場する実在の人物について
解説が施されている。

キーワードは、歴史、(社会階層を超えた)友情、心の成長。



2017年01月18日

S.Roncaglia, S. Ruiz Mignone 『Dentin Dentoni』


タイトル:デンティン・デントーニ
著者:シルヴィア・ロンカーリア
    セバスティアーノ・ルイツ・ミニョーネ
出版社:Lapis
初版:2015年6月

ぼくのパパは作家で子ども向けに本を書いている。
ママはイラストレーターだ。

ある月曜日の午後のこと。
忽然とぼくの家のリビングにウサギが現れた。
ウサギはピンク色をしていて、
おまけに言葉を話す!

驚いたぼくたちに、さらなる驚きが待っていた。
なんと、ウサギはいつもお腹を空かせていて、
野菜だけじゃなくてなんでも食べてしまうのだ。
そして、どんどん大きくなり
ついに2メートルくらいになってしまった。

パパは手をかえ品をかえ、
ウサギを追い出そうとするのだけど、
ことごとく失敗してしまう。

ぼくたちはウサギの存在を隠して暮らしていたけど
ついにパパの古くからの友だちにバレてしまう。
話を聞いたパパの友だちは
ウサギはパパが書くシリーズの主人公で、
パパがお話を書きたくないと言ったから
怒って出てきたんじゃないかと推理する。

半信半疑ながらパパが書斎にこもって
ウサギのお話を書き始めると、
台所から聞こえていたウサギの寝息が
だんだん小さくなってやがては聞こえなくなった。

タイトルは、姿を現したウサギの名前であり
主人公のパパが書くシリーズもののウサギの名前でもある。
dente は「歯」で、dentin(o) は「小さな歯」、
dentoni は「大きな歯」という意味。

小学校2,3年生向け。
ウサギの出現にまつわるドタバタ劇。
楽しく読める一冊。



2017年01月11日

カルロ・コッローディ8

さて、ペローの童話の翻訳や
『ジャンネッティーノ』シリーズの執筆で
子ども向けの文学の世界に足を踏み入れたコッローディですが、
その歩みを後押しするような出来事が起こりました。

1881年7月、ローマでイタリア初の子ども向け新聞
『子ども新聞
Giornale per i bambini』が発刊されました。
発刊者のフェルディナンド・マルティーニの依頼で
コッローディは子ども向けに操り人形を
主人公にしたお話を書きます。
後の『ピノッキオの冒険』につながるお話ですが、
この時は『あやつり人形のお話』というタイトルでした。

同年10月にピノッキオの死で物語が終わります。
ところが、全国の読者の子どもたちから
ピノッキオのお話を止めないでとの要望が届き、
お話の続行が決まって、翌年2月に
『ピノッキオの冒険』とタイトルを改めて連載が再開されます。
途中5ヶ月の中断を経て、12月に完結します。
そして、1883年1月にはエンリコ・マッツァンティの挿絵とともに
本として出版されます。

その後もコッローディはジャーナリスト、児童書の作家として
執筆を続けますが、1890年10月に突然亡くなります。
63歳でした。

コッローディが生きている間にピノッキオの物語は
第4版まで版を重ねましたが、
彼の作品が世界的に知られるようになったのは
亡くなってからのことでした。
260の言語・方言に翻訳され、
聖書の次に多くの言語に翻訳されたと言われています。

参考文献:
Pino Boero, Carmine De Luca,
La lettratura per l'infanzia, Editori Laterza, Bari, 2009
Rossana Dedola,
Pinocchio e Collodi, Mondadori, Milano, 2002
a cura di Daniela Marcheschi,
Carlo Collodi Opere, Meridiani Mondadori, Milano, 1995 

 

2017年01月07日

Tommaso Percivale 『Human』

著者:トンマーゾ・ペルチヴァーレ
タイトル:ヒューマン
出版社:Lapis
初版:2015年9月

人間とアンドロイドが共生する近未来社会。
そこでは社会を支配するのは人間で、
アンドロイドは人間に所有され、劣悪な環境の中で
人間には危険でできないような作業を担っていた。

アンドロイドのカッサンドラは養い親の二人を
アンドロイドにも人権をと訴える
テロリスト集団に殺されてしまう。
カッサンドラの心に生まれたのは復讐の気持ちだった。

アンドロイドに生まれるはずのない気持ちの萌芽に
戸惑いつつも、カッサンドラは
新たな所有者となった組織によって
警察組織に派遣される。
刑事として仲間のアンドロイドたちと事件解決に向かうが、
自身のミスで仲間の一人を故障させてしまう。

そのため記録を管理する部署へ左遷されたカッサンドラは
利用できる時間を使ってテロリスト集団について調査する。
テロリストたちが計画している次の襲撃を知り、
かつての仲間たちと再び現場に戻る。
そこで彼女を待ち受けていたのは出生の秘密だった――。

キーワードは、近未来SF小説、人間とアンドロイドの共生、
自分探し。

表紙の画像を貼り付けたかったんだけど
amazonでは見つからず、
イタリアのサイトから引っ張ってきても良いか分からず断念。
下のサイトから見れます。

https://www.amazon.it/Human-Tommaso-Percivale/dp/8878744298



2017年01月01日

新年のご挨拶

あけましておめでとうございます。

昨年9月にこのブログを立ち上げて以来、
ぽつりぽつりと雨だれのように更新してきました。
今年は昨年よりは頻繁に更新できたらなーと思っています。

少しずつ記事を書きためていつかは本にしたいとか、
このブログに来てもらえれば日本語で
イタリア児童文学の詳しい情報を得てもらえるようにしたいとか
野望―現時点では「野望」としか言えないくらい
実現性が低いのですが―を抱いています。
いつ叶うか分かりませんが、訪れる人が少ないうちに
こっそりつぶやいておこうと思いながら、
この記事を綴っています。

2017年もゆるりとお付き合いいただけますようお願いいたします。



a_yshtm at 19:16|PermalinkComments(0)●ひとりごと