2023年08月05日

Cristina Bellemo, Isadora Brillo『E la regina disse』



著者:クリスティーナ・ベッレーモ
   イサドーラ・ブリッロ
仮タイトル:そして、女王さまはいいました
出版社:Zoolibri
初版:2021年

力があることを感じたかった女王さまは
王宮のバルコニーに出ていいます。
「縞々を持っている者はわたしの国から
 出て行きなさい」
ストライプのシャツを着た人、縞のズボンをはいた人、
おでこにしわのある人、縞模様の猫を飼っている人、
縞々の傘を持っている人たちは
大慌てで荷物をまとめると、国から出ていきました。

しばらくして、また女王さまは力があることを感じたくなり
今度は自分の枕と毛布でぐっすり眠れる人と
にこにこ笑ってばかりいる人は国から
出ていくように命じます。

……という具合に女王さまは次から次に
さまざまな人を国から追い出してしまい
ひとりぼっちになってしまいます。
そして考えて考えて、たくさんの人や動物が
笑いながら、踊りながら、ぴょんぴょん跳ねながら、
にこにこ笑いながら王宮の庭に入ってくるところを
夢見ます。そして「そうよ、これよ!」というというお話。

パステルカラーで色調は抑えられていますが、
カラフルなイラストが添えられています。
描かれている人物がユニークで見ているだけでも楽しい絵本です。
女王さまは丸眼鏡に、短めのボブ、細くて長いまゆ、
ひだ襟の長い洋服、頭には電球のような
コック帽のようなものをかぶっていて
女王さまというよりは気難しいおばさんのようで
なんとも言えない親しみを感じます。

読者対象:5歳以上
キーワード:女王、命令



a_yshtm at 11:07|PermalinkComments(0)

2023年07月03日

Annalisa Strada『Biancaneve e i sette giganti』

Biancaneve e i sette giganti (AL)

著者:アンナリーザ・ストラーダ
仮タイトル:白雪姫と7人の巨人
出版社:Piemme 
初版:2022年

タイトルからもお分かりのように
グリム童話やディズニーアニメで知られる
「白雪姫」のパロディです。

本作でも主人公の白雪姫は継母に疎んじられます。
魔法の鏡が「国で一番の美女は白雪姫」と答えたことから
継母は狩人に頼んで白雪姫を殺そうとします。

白雪姫は狩人の手から逃れ森へ分け入っていきます。
そして、7人の小人たちが暮らす家にたどり着き、
そこで楽しく暮らすのですが、
継母の魔の手から逃れるため
小人たちと暮らす家を出た白雪姫は
巨人の国に迷い込んでしまいます。

そのことを知った継母は鏡を通じて
巨人たちとコンタクトを取り、白雪姫を捕まえて
お城に連れて来るよう頼む……という筋立てで、
継母の傍若無人ぶり、巨人たちの間抜けぶりが
ユーモアと皮肉たっぷりに描かれています。

最後、継母をとっちめてやろうとお城に行く白雪姫ですが、
大きなお城を眺めているうちに、
継母にやらされていた家事の大変さを思い出し、
自分が暮らしたいのはお城ではないことに気づきます。
継母への怒りも消え、白雪姫は森に戻ります。
小人たちとの再会を喜びますが、
白雪姫は小人たちと暮らすことを選ばず、
近くに自分好みの家を建てるというところでお話が終わります。

継母との確執を乗り越え、
成長し、自律した女の子が描かれているところが
何とも現代らしいお話しです。

読者対象:小学校中学年以上
キーワード:白雪姫、巨人、パロディー


2023年06月26日

Sara Piazza, Maki Hasegawa『Cinque minuti』



著者:サーラ・ピアッツァ
   マキ・ハセガワ
仮タイトル:あと5分
出版社:Il Castoro
初版:2022年

ピアはおじいちゃんとおばあちゃんの家の庭にいます。
お母さんが用事を済ませたらいっしょに家に帰る予定です。
「お母さん、あとどれくらい?」と尋ねると
「今、コーヒーを飲んでるところ。5分待って」とお母さん。
退屈したピアはベンチに寝そべって、空を見たり塀を見たり。
しばらくして、お母さんに声をかけると
「屋根裏にある箱を探さなきゃいけないの。
 5分待って」と返事。
また5分? ピアはベンチから立ち上がって
背伸びして塀の上を見てみました。
カタツムリがツノを伸ばして歩いています。

お母さんに5分待ってと言われるたびに
ピアは「もう!」と思いながらも
猫やてんとう虫を追いかけ、ついには野原に駆け出して
お母さんが「さあ、帰るわよ」と声をかけると
今度はピアが「5分待って!」と言う番に……というお話です。

ピアが少しずつ外の世界に目を向けていくのも素敵ですし、
最後にお母さんと立場が逆になるところも
一種の解放感があって、とてもいい作品です。

最後に近過去と半過去がちらっと出てきますが
ほとんど現在形で語られていますので
イタリア語を学び始めて間がない人にも
楽しんでもらえる絵本です。

読者対象:3歳以上
キーワード:庭、小さな生き物、待つ