2020年05月10日
ディーノ・ブッツァーティ『シチリアを征服したクマ王国の物語』(天沢退二郎・増山暁子/訳 福音館書店)
タイトルのまんまのお話です。
と言ってしまうと、みもふたもないので
もうちょっと詳しく書きます
昔々、今はもう存在しない山々にクマが住んでいた。
クマたちは洞穴に住んで、クリの実やキノコ、
松露などを食べてくらしていた。
ある日、クマの王は息子とキノコを採りに行った。
ほんの少し目を離したあいだに、息子がいなくなってしまった。
王は息子を探したが見つからず、洞穴に戻って、
息子は崖から落ちて死んでしまったと伝えた。
実は息子は人間にさらわれたのだった。
それから年月が流れ、ある時、これまでにないくらい
厳しい冬がやってきた。食べ物がなくなって困ったクマたちは
遠い平地へ降りていくことにした。
平地では人間たちが暮らしていて、雪が片付けられ
家々の煙突からは煙が出ていた。
食べ物がある証拠だった。
クマたちは平地へ行き、人間と戦い、
戦いに勝ってクマの王が町を治めることになりますが
別の問題が持ち上がります。
その問題というのは……気になる方は
ぜひ本書を手にしてみてください。
著者のディーノ・ブッツァーティは、イタロ・カルヴィーノとともに
20世紀のイタリア文学を代表する作家と目されています。
彼の描く幻想の世界は現実の延長にあり、読者はいつの間にか
幻想の世界へいざなわれていて、不条理を体験することになります。
そんなブッツァーティが書いた童話が本書です。
本書のイラストもブッツァーティの手によるものです。
ブッツァーティは絵の才能もあり、本書以外でも、
自分の本の表紙を手掛けたりもしていますし、
個展を開いたこともあるとか。
近年これまで訳されていなかったブッツァーティの作品が
日本語で読めるようになっています。
不条理の世界にクラクラすること請け合いです
2020年05月07日
2020年度ストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作
新型コロナウィルス感染拡大によって、開催が延期から
中止になった今年のボローニャのブックフェアですが、
いくつかのイベントは5月4日から7日にかけて
オンライン上で実施されました。
イベントの一つは、国際アンデルセン賞の受賞者の発表でした。
Twitterでつぶやいている方もいらっしゃいましたし
IBBYのサイトでもニュースが発表されましたので
結果をご存知の方もいらっしゃると思います。
受賞者は以下の通りです。
・作家賞:ジャクリーン・ウッドソンさん(アメリカ合衆国)
・画家賞:アルベルティーヌさん(スイス)
もう一つのイベントで、わたしがより関心を抱いていたのが
タイトルにもある今年度のストレーガ・
ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作の発表でした。
受賞作は以下の通りです
(著者、タイトル(イタリック体)、出版社の順です)。
・+6のカテゴリー、つまり6~10歳向けの本のカテゴリーの受賞作
Marta Palazzesi(マルタ・パラッツェージ)、Nebbia、Il Castoro
・+10のカテゴリー、つまり11歳以上向けの本のカテゴリーの受賞作
Lynda Mullaly Hunt(リンダ・マラリー・ハント)、Una per i Murphy、Uovonero
amazonで書影を出せるかと思ったら出せませんでした
マルタ・パラッツェージはイタリアの作家です。
受賞作は1880年のロンドンを舞台に、オオカミと少年の物語を通じて
自然、正義、自由を求める心について書かれた作品のようです。
(まだ読めていないので、いつか、イタリアから
本を買えるようになったら読みたいと思います)
リンダ・マラリー・ハントはアメリカの作家です。
受賞作は、母親が入院しているため一時的に別の家族に
引き取られた少女の物語のようです。デビュー作みたいです。
(これもまだ読んでいません。いつか、
これは日本語で読めたらいいな)
同作家の作品は、日本語では難読症の少女を主人公にした
『木の中の魚』(講談社)を読むことができます。
中止になった今年のボローニャのブックフェアですが、
いくつかのイベントは5月4日から7日にかけて
オンライン上で実施されました。
イベントの一つは、国際アンデルセン賞の受賞者の発表でした。
Twitterでつぶやいている方もいらっしゃいましたし
IBBYのサイトでもニュースが発表されましたので
結果をご存知の方もいらっしゃると思います。
受賞者は以下の通りです。
・作家賞:ジャクリーン・ウッドソンさん(アメリカ合衆国)
・画家賞:アルベルティーヌさん(スイス)
もう一つのイベントで、わたしがより関心を抱いていたのが
タイトルにもある今年度のストレーガ・
ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞受賞作の発表でした。
受賞作は以下の通りです
(著者、タイトル(イタリック体)、出版社の順です)。
・+6のカテゴリー、つまり6~10歳向けの本のカテゴリーの受賞作
Marta Palazzesi(マルタ・パラッツェージ)、Nebbia、Il Castoro
・+10のカテゴリー、つまり11歳以上向けの本のカテゴリーの受賞作
Lynda Mullaly Hunt(リンダ・マラリー・ハント)、Una per i Murphy、Uovonero
amazonで書影を出せるかと思ったら出せませんでした
マルタ・パラッツェージはイタリアの作家です。
受賞作は1880年のロンドンを舞台に、オオカミと少年の物語を通じて
自然、正義、自由を求める心について書かれた作品のようです。
(まだ読めていないので、いつか、イタリアから
本を買えるようになったら読みたいと思います)
リンダ・マラリー・ハントはアメリカの作家です。
受賞作は、母親が入院しているため一時的に別の家族に
引き取られた少女の物語のようです。デビュー作みたいです。
(これもまだ読んでいません。いつか、
これは日本語で読めたらいいな)
同作家の作品は、日本語では難読症の少女を主人公にした
『木の中の魚』(講談社)を読むことができます。
2020年05月04日
Irene Adler『Sherlock, Lupin & io 1 Il trio della dama nera』
著者:アイリーン・アドラー
仮タイトル:シャーロックとルパンとわたし1 黒衣の貴婦人トリオ
出版社:Edizioni Piemme
初版:2011年
イギリスの小説家アーサー・コナン・ドイルの推理小説
シャーロック・ホームズシリーズに登場するアイリーン・アドラーが
著者となっていますが、実際は、ピエルドメニコ・バッカラーリオが
企画し、アレッサンドロ・ガッティが書いています。
シャーロック・ホームズとアルセーヌ・ルパンが
少年だったころのお話で、
2人と友だちになったアイリーン・アドラーが語り手になっています。
3人がさまざまな事件に遭遇するシリーズの第1巻です。
シリーズは既に22巻と特別編2冊が出ています。
シリーズを通底する物語がありますが、
一つ一つの事件は1冊の中で完結しています。
第1巻の舞台は1870年7月、フランス北西部のサン・マロ。
ひと夏を過ごすためにパリからやってきたアイリーンは
サン・マロに着くなり散策に出かける。
すると、サン・マロの海賊について書かれた本を
読んでいる少年と出くわす。シャーロックだった。
二人は持ち前の観察力を発揮して
お互いに出身がどこかとか家族構成とかを推理する。
そこへアイリーンを探す声を聞こえたので
2人は逃げ出して波止場へ向かう。
波止場ではボートを掃除しているルパンがいた。
シャーロックとアイリーンはルパンのボートに飛び乗り
今では無人となった小さな島へ行く。
その翌日、3人がまた無人島へ行って一日を過ごし
サン・マロへ戻ってくると、砂浜に遺体が打ち寄せられている。
遺体は男性のもので、きちんとした身なりをしている。
ポケットを探るとカードと石が出てきた。
その時、遠く離れたところでマントを羽織った人が
こちらを見ていることにアイリーンが気づく。
3人は走ってその場を後にし、カードのことは警察にも言わず
3人で捜査することにする。
ルパンとシャーロックが調べたところ、
男は別の名前で別のホテルに泊まっていたことが分かった。
一体、男は誰なのか。
やがて、夜中に屋根を上を徘徊する黒衣の男がいて
町の人々から「屋根泥棒」と呼ばれていることや
マルティニー夫人のダイヤのネックレスが
盗まれていたことが分かり、
嗅ぎまわるのはやめろと町の不良少年たちに襲われ……と、
3人は事件に巻き込まれていくーー。
次から次へと起こる事件にページを繰る手が
止まらない1冊になっています。
抜群の推理力を見せるシャーロックに、
冒険好きのルパン、そして気が強いアイリーンと
3人のキャラクターがしっかり書き分けられています。
それは、もちろん本家本元のシャーロック・ホームズ、
アルセーヌ・ルパンにつながる姿です。
ルパンのお父さんは軽業師ということになっているけど
どうも違うらしいとか、アイリーンの両親は
本当の両親ではないらしいとか、続く巻で明かされる謎が
散りばめられています。
わたしはシャーロキアンではないので
知らなかったのですが、世の中には
少年シャーロック・ホームズを主人公にした作品が
いろいろと出ているのですね。
目についたところだと、アンドリュー・レーンの
『ヤング・シャーロック・ホームズ』とか
トレイシー・マックの『シャーロック・ホームズ&
イレギュラーズ』とかが、日本語でも読めるようですね。
今回取り上げたシリーズは、
ルパンやアイリーンも出てくるところが
上の2シリーズとは違うところですね。
読者対象:小学校高学年
キーワード:シャーロック・ホームズ、ルパン、推理、冒険