2018年02月07日

Guido Quarzo『Maciste in giardino』

Maciste in giardino
Guido Quarzo
Il Cantiere Delle Parole
2015-09


著者:グイド・クァルツォ
タイトル:庭のマチステ
出版社:Rizzoli
初版:2015年9月

語り手の「ぼく」が子どもの頃の思い出を
語るという体裁。時代は1967年。

田舎の一軒家に両親と暮らしていたぼくは
ある日、庭でモグラを目にする。
そのモグラはとても大きく、
ぼくはパパといっしょに
モグラに「マチステ」という名前をつけた。

映画「カビリア」に登場する、
力持ちで優しい英雄から取ったのだ。

ママはモグラがいると聞いて、
庭に植えている花や野菜がダメにされてしまうと
モグラ退治を頼むことにする。

やってきたのはジーノ・バンディエーラという人だった。
バンディエーラさんは巨人のように
背が高く、体も大きく、
目が悪いために杖をついていた。

目が悪いのにどうやってモグラを退治するのだろう。
ぼくは興味津々でバンディエーラさんの仕事を眺める。
バンディエーラさんは地面に耳をあて、
土のなかの音を聞くと、
モグラがいるとか、いないとか
いるならどのあたりにいるか、分かるのだと言う。
そして、モグラを捕まえるには
目が見えるか見えないかは関係ないのだとも言う。

ぼくの好奇心はかき立てられるばかりで
バンディエーラさんがやって来る日が
待ち遠しくて仕方がない。

やがてバンディエーラさんは
自分の過去を話してくれるようになり、
ぼくは、サーカスで仕事をしていたことや、
その後はボクシングをやって
チャンピオンと歴史に残る試合をしたこと、
その試合がどんなだったかを教えてもらう。

バンディエーラさんの話を楽しむ一方で
ぼくには不安があった。
それは、捕まえられたマチステがどうなるかだった。
恐る恐るバンディエーラさんに尋ねると
殺さずに秘密の場所に連れて行くのだと言う。

ある日学校から帰ってくると
バンディエーラさんが庭でぼくを待っている。
マチステを捕まえたのだと言う。
どうやって捕まえたのかさっぱり分からない。
捕まえるところを見たかったぼくは
残念な気持ちを持ったまま
マチステを秘密の場所に連れて行くと言う
バンディエーラさんに挨拶をする。

それっきりぼくはバンディエーラさんと会うこともなく、
バンディエーラさんのことを思い出すこともなく成長する。

そして、ママから電話があり
バンディエーラさんが亡くなったと聞かされる。
ぼくはお葬式に行き、バンディエーラさんに
最後のお別れをしようとたくさんの人が来ていることに気づく。
バンディエーラさんと戦ったボクサーも来ていた。

お墓に行って、なにもかも終わったあと、
ぼくは霊園で働く人と言葉を交わす。
その人の言葉から、バンディエーラさんは
捕まえたモグラをこっそり霊園に連れてきていたことを知る。

先日ご紹介した『クララ、海へ行く』と言い、
本書と言い、グイド・クァルツォの作品は
ハートウォーミングなものが多い気がする。

本書は昨年度のストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞
6-10歳部門の最終候補作品。


2018年02月04日

カルロ・コッローディ『ミヌッツォロ』

Minuzzolo (Aurora)
Carlo Collodi
Landscape Books
2015-05-10


本書は『ジャンネッティーノ』の続編で
1878年にカルロ・コッローディによって書かれた。
(『ジャンネッティーノ』についてはこちらこちら。)

ジャンネッティーノがボッカドーロ先生と旅に出たところで
『ジャンネッティーノ』は終わっているが、
本書は町に残った、ジャンネッティーノの友だちの
ミヌッツォロが主人公。

『ジャンネッティーノ』と同様、読者の子どもたちが
知識を得て、道徳を身につけられるように書かれている。

ミヌッツォロは4人兄弟の末っ子。
お父さんが田舎に別荘を買ったことから
一家で別荘へ向かう。

ミヌッツォロは兄たちとともに
別荘へ行くためにギリシャ神話を勉強し、
別荘についてからは、別荘のフレスコ画に
描かれている人物を友だちに説明するために
ローマ帝国の歴史を学び、
庭師からは植物について教わる。

合間にミヌッツォロの失敗やいたずらが語られ、
お父さんから罰を受けたりたしなめられたりする。

本書は1878年11月初めに出版され、
同月9日には書評が出ている。
そこには、コッローディのみが書きうる文体で、
機知に富んだ新しいモットーとユーモアのある
教育のための本だとある。

コッローディのみが書きうる文体というのは、
会話を多く用い、トスカーナ地方で使われている言葉や
表現を織り交ぜた文体のことである。
『ジャンネッティーノ』でも使われているが
やがてこれが『ピノッキオの冒険』へと結びついていく。



2018年02月03日

Andrea Molesini『Nonna Vudù e la congiura delle zie』



著者:アンドレア・モレジーニ
タイトル:ヴードゥーおばあちゃんとおばちゃんたちの陰謀
出版社:Rizzoli
初版:1994年
   (Bur ragazzi版は2016年10月)

アンドレア・モレジーニは、
作品をいくつも読んでいるわけじゃないけど
非常にユニークな発想をする作家という印象を持っている。
日本語には『ベネチア人にしっぽがはえた日』がある。
タイトルを見ただけで
うなずいてもらえるのではないだろうか。

本書も上のわたしの印象を裏切らない。
タイトルにあるヴードゥーおばあちゃんというのは
実はお話だ。まだ誰にも語られていない怖い話。
それが人格を持って、動く。

そして、おばちゃんたちというのは人食い鬼だ。
人食い鬼の世界では子どもの方がはしっこく、賢い。
大人になるについて動きが鈍くなる。
体だけじゃなくて頭も。
いたずら盛りの甥っ子、姪っ子の面倒を見るのに
手を焼くのは人間界も人食い鬼界も一緒。

甥っ子のいたずらを何とかしたいと思った
人食い鬼のイオランダはある日、ジェポ山へ行く。
そこにはいまだ語られていない物語たちが住んでいた。
そんなこととは知らないイオランダは
たまたま物語のひとつを口にしてしまう。
山を下りて、住まいに戻ったところ
口からひとりでに物語が出てくるではないか。
子どもたちはその物語を聞いて大人しくなった。

これを見た人食い鬼のおばちゃんたちは
(注:この「おばちゃん」は中高年女性を指すのではなく
 「叔母」「伯母」を指す)
大挙してジェポ山へ赴く。
ところが物語だって自分を語ってくれる人を選びたい。
人食い鬼たちがやって来るのを見て一目散に逃げてしまう。
が、イオランダの悪知恵のおかげで
人食い鬼たちは物語を捕まえることができる。

捕まった物語の中にヴードゥーおばあちゃんがいた。
人食い鬼に食われるのはごめんだと
ヴードゥーおばあちゃんはうまく逃げ出し
人間界へやって来る。
そこでヴードゥーおばあちゃんは
人間の魔手につかまりそうになるがなんとか逃げ出し
自分と同じ物語と出会う。

その物語と図書館に行ったところで
イオランダにつかまり、ヴードゥーおばあちゃんは
人食い鬼の世界に連れ戻されてしまう。
イオランダの窮状を知ったヴードゥーおばあちゃんは
アメとムチの策をさずけ、
イオランダら人食い鬼のおばちゃんたちを救い、
語られていない物語のための旅行代理店まで作ってしまうーー。

奇想天外で、物語の面白さ、楽しさを伝えてくれる作品。
こういうぶっ飛んだ作品、個人的には大好きなんだけど
評価は分かれるだろうなー。

読者対象:小学校中学年
キーワード:人食い鬼、奇想天外、物語

モレジーニの邦訳は以下。
下の作品でイタリアアンデルセン賞を受賞している。
作品についてはまたいつか別記事で。