2018年10月09日

ロベルト・ピウミーニ『ケンタウロスのポロス』(長野徹・訳 岩波書店)

ケンタウロスのポロス
ロベルト・ピウミーニ
岩波書店
2018-05-18


ギリシア神話の世界を舞台にした物語。

ケンタウロスたちは、粗野で、乱暴で、荒々しい。
ところが、ポロスはほかの者と違って
荒々しいことがあまり好きではなく、
ひとりでいることが好きだった。

ある日のこと、怪力の英雄ヘラクレスが
冒険の帰りにポロスの洞穴のそばを通りかかり、
ポロスはヘラクレスを歓待した。
宴の最中にほかのケンタウロスたちがやってきて
騒ぎを起こしたため、
ヘラクレスはケンタウロスを殺してしまった。

ケンタウロスたちの復讐を恐れたポロスは
賢者ケイロンの言葉に従って
「言葉を語る木々の森を見つける」旅に出る。

旅の途中、王の弟と望まぬ競走をすることになったり
女たちばかりのアマゾン族につかまったりと
数々の困難を乗り越えながら
イリーネという道連れも得て
ポロスの旅は続くーー。

読み終わって最初に思ったのが、これは
後続の人たちへのピウミーニからの応援歌だと
いうことでした。

これまでピウミーニの作品は
イタリア語でも日本語でも読んできましたが、
こんな風に感じたのは初めてでした。

本書がイタリアで出版されたのが2015年。
ピウミーニ、68歳の時です。
老齢に達しようとする作家に
何か心境の変化があったのかもしれません。

ほかのケンタウロスたちとは異なる性格の
ポロスを物語の主人公にすることで
「他と違っていていいんだよ」と
言われているような気がしました。

帯にも背表紙にも「行きて帰りし物語」とあって
確かにその通り、ポロスは旅を終えて
かつての仲間のところに戻ってくるのですが
(戻ってきて何があるかはぜひ本書をお読みください)
物語の最後の最後に起こることが
あまりにもインパクトが強すぎて
「行きて帰りし物語」だということとか、
物語の中で語られてきたポロスの困難が
吹っ飛んでしまったくらいでした。

何が起こるのか? ですって?
気になりますよね。
そんな方はぜひぜひ本書をお読みください。(←しつこい?
ヒント(?)は、イタリアってやっぱり
アモーレ の国なんだな~、です。

本書について、大阪国際児童文学振興財団の
メールマガジンNo.96の、「この本読んだ?」のコーナーで
土居安子さんと対談しました。
(というか、二人でしゃべったのを
 土居さんが 素敵にまとめてくださいました)
こちらで配信の登録やバックナンバーの講読ができるようですので
気になる方は、こちらもぜひご覧ください。



2018年10月08日

Carlo A. Martigli『L'apprendista di Michelangelo』


著者:カルロ・アドルフォ・マルティッリ
タイトル:ミケランジェロの見習い
出版社:Mondadori
初版:2017年

舞台は1534年のイタリア。
ヤコポには絵の才能があった。
ところが、毛織物商を営む父は
ヤコポの才能を認めず、
自分の商売を継がせることしか考えていない。

夢を追うことに決めたヤコポは
ある夜、家を抜け出し、ローマへ向かう。
たどり着いたところは、
ミケランジェロがフレスコ画を描いている、
のちのシスティーナ礼拝堂だった。
(当時はカピトリーナ礼拝堂と呼ばれていた)

ヤコポは絵の才能をかわれ、
すぐにミケランジェロに雇われる。
ところが、任されたのは絵と関係のない、
水を汲んできて、職人たちに水を持って行く仕事。
こんなことをしたいんじゃないと腐るヤコポは
ある日、ミケランジェロに呼ばれ、
手紙を届けるよう言われる。

ミケランジェロから信頼されるようになったヤコポは
絵の仕事だけではなく、ミケランジェロが属する
秘密のグループのために奔走することになる。

そんな折、教皇クレメンス7世が亡くなった。
教皇の儀典長を務める、ビアージオ・ダ・チェーゼナは
前からうとましく思っていたミケランジェロが
教皇を暗殺したと主張し、ミケランジェロを捕まえようとする。

誰が正義で、誰が悪なのか分からなくなってしまうヤコポ。
やがて、ヤコポはビアージオの罠にはまり、
スパイをさせられることにーー。

謎が謎を呼び、教皇暗殺をきっかけに
謎は最高潮に達し、次期教皇の座を狙うビアージオと
さらなる権力を手に入れようとするローマの有力貴族に
真実を追い求めようとするミケランジェロとその仲間たちが
三つ巴になって、権謀術数を繰り広げる。

こんな作品が面白くないわけがなく夢中で読んでしまった。

ミケランジェロの『最後の審判』にまつわる時代小説。
面白いと思うんだけど、日本では読者を獲得しにくいだろうか。

読者対象:小学校高学年以上
キーワード:謎、暗殺、教会、ミケランジェロ、『最後の審判』

今回amazonから書影を貼ることができませんでした。
こちらで書影をご覧いただくことができます。
イタリアの出版社のサイトに飛びます。



2018年10月01日

Andrea Vitali『Il mistero dell'uomo barbuto』

Il mistero dell'uomo barbuto
Andrea Vitali
Mondadori Electa
2017-10-31





著者:アンドレア・ヴィターリ
タイトル:ひげもじゃの男のなぞ
出版社:Mondadori Electa 
初版:2017年10月

サンタクロースっているの? いないの?

ある年齢になると子どもたちの間で
真剣に議論される話題ではないでしょうか。
イタリアでもそのようです。

クリスマスも近いある日のこと。
学校でトムはクラスメイトのレベッカに
サンタクロースなんていないと言われ、
ショックを受けます。

次の日、学校へ向かう途中の公園で
一人の男性を目にします。
その男性は赤い服を着て、髭を生やしていて
そう、まるでサンタクロースです。
いやいや、あれはサンタだ! 
レベッカの言ったことは嘘だった! と意気込むトム。

親友のカルミネも巻き込んで
トムはレベッカをつかまえて
サンタがいないなんて嘘だと詰め寄ります。
驚いたレベッカは泣きだしてしまい、
先生がやって来て、校長先生のところに連れて行かれ、
それぞれの親も呼び出され、大騒ぎになります。

カルミネのお父さんは憲兵でした。
お父さんは話を聞くとすぐに公園に行って
男性に名前や職業をききますが、男性は答えません。
不審者ということで、男性は捕まえられてしまいます。

間もなくクリスマスだというのに
サンタが捕まってしまっては
プレゼントを配る人がいません。

さあ、どうしよう……ということで
ベファーナも登場して、サンタ救出に向かうというお話。
(ベファーナは1月6日のエピファニーの前夜
 良い子にお菓子やおもちゃを、
 悪い子に炭を配って回るおばあさん)

トムたちの間に起こった論争は
大人も巻き込んで騒ぎになるけど
最後はみんながハッピーになる、
ほのぼのと可愛らしく、心温まるお話。
柔らかい色で描かれたイラストもお話にピッタリ。

読者対象:小学校中学年
キーワード:サンタクロース、ベファーナ、謎